或る闘病記

生きるって楽しい。

ウホウホ、ウホ!

 

 「お前の闘病記難しすぎるねん!」

 「病気について書いてくれてるのも嬉しいけど、もっと入院生活についても書いてよ!」

 

 などなど、数々の苦情が山のように寄せられている本闘病記ですが、今日は期待に応えてゆる〜く行きたいと思います!

 

 

 

 お見舞いに来てくれた人は分かると思うんですが、僕は結構元気にしてます。多分祇園祭の中、死んだ魚の目で居酒屋バイトに勤しむ大学生よりは元気です。

 

 

 どれくらい元気かというと

 

 ・もらったお見舞いの品で看護師さんを餌付けする

 ・患者さんとオールスターゲームを見ながら「松坂ふざけんな!」とヤジを飛ばす

 ・患者さんと仲良くなってアイスを4つ奢ってもらう

 ・研修医に大声でブチ切れる

 

くらいには元気です。

 

 

 

 研修医にブチ切れる?

 

 いやぁ久しぶりにキレましたね(笑)

 

 

大学病院には、研修医制度というのがあって、医学科を卒業して医師国家試験に合格した医者達が、初めの2年間ほどを、数ヶ月単位で様々な科を回りながら 経験を積んで行くんですが。

 

 

 今回の入院で付いてる研修医、ひどい。

 

 

 どんな感じかというと、イカ京(いかにも京大生、の略)で、小太りの眼鏡、無精髭、ちょっと臭う、みたいな感じで、別にそれはいいんですけど、

 

 コミュニケーションは最低限、輸血で血を撒いてベッドを汚す、輸液のポンプの使い方知らんのに勝手に触る、俺の血管めっちゃ太いし簡単やのにライン取るの失敗する、失敗した挙句血を撒いてベッドを汚す、もちろん血管は使えなくなる、使えなくなって腫れてるのに「抗生剤打ってるので大丈夫です」とか言う、中心静脈カテーテルも入れるん失敗したのに何も言わへん、あーもう挙げたらキリがないねん。

 

 ほんで昨日ですよ。奴はやりました。

 

 輸血の血小板を落としたんですわ。

 

 マジで。

 マハトマ・ガンジーでも助走付けて殴るよ。

 

 

 大部屋で、自分でも驚くほど大きな声で

 

 

ふざけんな!

 

 

って叫びました(笑)

 

いや、前にもそんな置き方したらあかんって先輩から注意されてるやんけ。

 俺が年下やからってなめてんのか。

 輸血の意味分かってんのけ?

 善意で献血してくれてるんやぞ。

 だいたい、俺はこれがなかったら死ぬんや。

 お前が血小板を落とすっていうのは、俺の命をぞんざいに扱ってるも同然なんじゃ。

 白血病のステージⅣって診断されて、それでも生きるって決めて、それやのに研修医にそういう態度で臨まれる、そんな患者の気持ちちょっとでも考えたことあんのけ?

 適当に医者やるんやったら今日で辞めてくれ。

 血小板落としただけとか思ってるんやろうけど、そういう態度でやってると、いつか死人が出るねん。

とにかくもう帰れ!

 

 

 みたいなことを言いました。

 至極真っ当じゃないですか?

 

 

 (僕がキレるのは倫理的な問題がある時と文化祭の時くらいです。)

 

 

 

 まぁでも、いくら年上とはいえ、言わないといけないことはキッチリ言うべきです。

 

 

 

 は〜 ストレスストレス〜

 

 

 

 

 僕は何とかしてこのストレスを取り除かないといけないな、と思いました。

 

 というのも、癌の主たる原因はストレスによるDNA修復異常あるいは染色体異常だと言われているからです。

 

 どうしようかなぁ。

 

 

 そんなとき、あるものが目に飛び込んできます。

 

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 マッサージチェア

(病棟にあるんですよね。血液内科の特権です)

 

 ウィンウィン〜。

 

 

 

 

 

 

 

いやこんなもんでストレスほぐれるかい!

 

 

 

そんな簡単にストレスほぐれるんやったらWANIMA聞いて癌が治るぞ!

 

(WANIMAファンの皆さんホンマにすみません)

 

 

 

 

 ストレス解消は運動に限る!

 

 こっちやろこっち!

 

 

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エアロバイク〜

 

これで一汗流すぞ〜

 

(このあと無茶苦茶漕ぎました)

 

 

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あのクソ野郎!と思いつつ、

 

100W・毎分100回転で

 

30分間で15km 漕ぎました。

 

時速30kmですよ。

 

 

想像してみてください。

 

白血病患者が、腹いせに時速30kmで汗まみれになりながらバイク漕いでる姿。

 

瀬戸内寂聴でも「もう辞めなさい!」って言いますよ。

 

 周りの患者さんも看護師さん達もドン引きしてました(笑)

 

 担当医は「おいおいヘモグロビン健常者の半分やぞ〜」って笑ってました。

 

主治医に15km漕ぎましたって報告したら白目剥いてました(笑)

 

そらね、単純に言うたら酸素運搬能力が常人の半分ってことですからね。アホかよ。

 

 

 

 

 

 さてお昼ご飯の時間です。

 

 昨日のお昼はなんと!

 

 

 

 

 

 

 

 

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 握り寿司!

 

 しかもイクラとアナゴがある!

 

 これには山極寿一(京大総長)もビックリですね!

「ウホウホ!ウッホホホ!(なんで京大の食堂には寿司ないのに病院にはあるねん!)」とか言いそう。

 

 馬鹿にしてるわけじゃないですよ。山極さんはマジでゴリラと何年も生活してたのでゴリラ語が喋れます。ただのゴリラです。

 

 

 何の話やっけ。そう、お昼ご飯は握り寿司でした。

 

 夜のメニューが怖い。

 

 いやぁ、こういう時って、世の中の暗黙の了解みたいなのがあって

 

「お昼いいもん食べたんやから夜はお野菜ね!」

 

 のお決まりな感じなんですよね。

 

 さて夜のメニューを見てみましょう、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ヒレカツぅ!

 

 そろそろ山極寿一がアップを始めそうです。

 

 

 

ふざけ出すと止まらないので、偉い人が来る前にこの辺で辞めておきます(笑)

 

 

 最後にお知らせを。

 

 昨日HLAの型がでました!

白血球の型、のやつです。

(分からない人は過去ブログ読んでね)

 

 

 

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じゃん!

 

 HLAには座(遺伝子座)とよばれる領域があり、このうちA座、B座、C座、DR座の4座8抗原の一致が骨髄移植には重要だと言われています。

それからアリルと呼ばれる対立遺伝子もあって、、、

 

 

 あ、あかん。

 今日はゆる〜く行くんやった。

 説明省略〜。

 

 

 とりあえず出てきた結果を「造血幹細胞移植サービス」の検索にぶち込みます。

 

ドナー数、36万人いるし大丈夫やろ!

 

 えい!

 

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2人やんけ!

 

36万人もおって2人かよ!

 

まぁおったしええわ!

 

(分かったやろみんな! 意外とおらんねん! だから骨髄ドナー登録してな!)

 

 

 

 それでは今日はこの辺で!

 

 

 ウホホウホ〜(おやすみなさい〜)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dogma ードグマー

 

ドグマ。

 

日本語では、教義・教条などと訳されます。

固定された堅固な信条のことです。

 

 

 生死の境で生きる患者達には、あるドグマがあります。

 

 

 

それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 病とは、不幸そのものではない」

 

 

 

 

 

 

 

というものです。

 病によって、気付かされることが沢山あることを知っているからです。

 僕にとっての病とは、”幸福な試練” です。

 自分がどう生きてきたのか、どう生きるのか、それを試される時間です。

 僕がもし恵まれぬ生き方をしてきたのなら、この試練も不幸なものになったのかもしれない。

 でも僕は、20年間を通して、数多くの尊敬できる人々や、支えてくれる仲間達と出会ってきました。

 それが、この試練さえも、むしろ幸福な時間にしてくれるんです。

 毎日のように誰かが来てくれて、たわいもない昔話で馬鹿笑いして、帰って行く。

 その度に、幸せだなぁ、と思うんです。

 このドグマは、おそらく生死の境を生きる者にしか理解しえないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。

ドグマはドグマでも、今日は生きとし生けるものに授けられた、あのドグマの話をします。

 

 

そうです。

セントラル・ドグマの話です。

 

 

 

 生物選択者ならずとも、一度は耳にしたことがあると思います。

 

 

 

 セントラル・ドグマとは、1958年にフランシス・クリックにより提唱された、分子生物学の大原理のことです。

 

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 大雑把に言うと、私達の身体を構成するあらゆるタンパク質が、DNAを基に、RNAを介して生成されている、という一連の流れのことです。

 

 私達の身体は、約60兆個の細胞で形成されています。その細胞の集まりが組織(例えば筋肉)であり、組織の集まりを器官(例えば心臓)と呼んでいます。

追記: なんか2013年に試算されたらしく、学術的には人間の細胞数は37兆個とされてるらしいです)

 

 つまり細胞は、身体の構成要素の根幹とも言えます。

 

 (何でこんな噛み砕いてんねん舐めんなよって方へ、後で後悔するレベルで難しいこと言うんで最後までついて来てくださいね!)

 

 

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 細胞のうち70%は水分で形成されています。そして次に多いのが、タンパク質です。このタンパク質こそが、その細胞の性質を司っています。

 

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 タンパク質は、細胞内で作られます。つまり、このセントラルドグマ(DNA→RNA→タンパク質)は、細胞内での話なのです。

 

 因みに、セントラルドグマは、提唱されてから60年で変遷を遂げ、現在はこんな感じになってます。これについて話すと無茶苦茶時間かかるのでやめます。今日は「複製」だけについて書きます。

 

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私達の細胞は、分裂を繰り返すことでその数を増やします。この時、細胞内のDNAも、分裂前と同じものを受け継いでいます。これをDNAの複製と言い、細胞は、分裂前に一揃えのDNAをコピーすることで2倍に増やしてから、分裂の際にそれぞれの細胞へと同じDNAを格納しているのです。

 

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まぁ大学受験で生物選択した人は何てことない話ですよね。ここは重要じゃないんで飛ばします。実を言うと僕もよくわかりません。

 

 

 でも最初はたった1つの細胞から始まった私達の身体が、こんなセントラルドグマを通して60兆個の細胞に発展していくの、凄いですよね。

 

 

 

 さて、ここから今日の本題です。

 

 

 

 このセントラルドグマ、普通にミスるんです。

数字で言うと、「複製」を10億分の1の確率でミスります。

 

 60兆個も細胞あるのに10億分の1でミスるの、結構ヤバくない?

 

 2017年のNature誌に掲載された米国チームの研究によれば、癌を引き起こす原因の3分の2近くは、このDNAの複製エラーによるものであるとされています。

 

一方で、この複製ミスによって出現したエラー細胞も、殆どは「死滅」という道を辿る、というのも事実です。この細胞の死は「アポトーシス」と呼ばれ、予め遺伝子で決められたメカニズムによって半ば自殺的に細胞は死滅するのです。こうして、古い細胞は新しい細胞と入れ替わっていくのです。例えばオタマジャクシの尻尾が消失したりするのも、その一種だと考えられています。

 

 ところが、稀に、複製エラーによって「アポトーシス」のプログラムがなくなり、「自殺」できなくなることがあります。こうなると細胞は増殖だけを続け、薬剤で死滅させない限り身体のエネルギーを奪い続けます。

 

これこそが、癌です。

 

 

 為になる話ですね〜(自分で言うなよ)

 さらに専門的になるんですが、最後まで読んでくださいね、、、

 

 

 じゃあお前も複製エラーなん?

 と思ったそこのあなた。

一昨年の癌は、複製エラーです。正解です。

ところが今回は、複製エラーではありません。

 

今回は、「転座」です。

 

 

てんざ〜

 

 

 

転座とは、いわゆる「染色体異常」です。

 

ここで「DNA」「染色体」「遺伝子」の3つがこんがらがってきた人も多いと思うので、整理します。

 

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塩基対の持つ情報を遺伝子、塩基対を介して2本のポリヌクレオチド鎖が二重螺旋構造を取っているものがDNA、このDNAが折りたたまれたものが染色体です。

 

 そしてDNAの複製エラーが癌、

 染色体の転座が白血病なのです。

 

(厳密には違います。こういう言い方すると偉い人が飛んできて怒るかなぁ)

 

 次に、「転座」について詳しくみていきます。

 

 

 みなさんご存知の通り、人間には1番染色体〜22番染色体と、X染色体・Y染色体の合わせて46本の染色体が存在します。

 

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 この46本の染色体のうち、いずれか2本が途中で交換されてしまうのが、「転座」です。

(どうして転座が起こるのかは、未だに分かっていません)

 

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 転座が起こった異常な染色体が、セントラルドグマの中に組み込まれて転写・翻訳されることで、異常なタンパク質が生成され、異常な細胞となる。これが白血病やリンパ腫のメカニズムだと言われています。

 

例えば、「バーキットリンパ腫」の場合は、その80%において、8番染色体と14番染色体の相互転座によってB細胞に発癌します。

 

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具体的には、免疫グロブリン重鎖(IGH)遺伝子とC-MYC遺伝子の切断によるものです。

 

 

これによりC-MYC遺伝子が過剰発現している状態が、バーキットリンパ腫/白血病の特徴だと言われています。

 

 ところが。

 

僕の場合は、その80%に入っていませんでした。

 

つまり、8番染色体と14番染色体の相互転座は見られなかった、しかしながらC-MYC遺伝子は過剰発現していた、ということらしいです。

 

「なんでなんですか?」

 

って主治医にも担当医にも聞きましたが、「分からん」って言われました。おそらく、バーキットリンパ腫/白血病と、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の中間に位置する病態だからかな? もう研究の領域だそうです。

 

 研修医にも聞いてみようかな〜(笑)

 

 

ここまで読んでくれた皆さんは、多分バーキットリンパ腫白血病について、担当研修医(京大医学部卒)より絶対詳しくなりました。

 

 

 最後に。

 

よく聞かれるんですよね、「今回の病気と前の病気、関係あるん?」って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ないです。

京大病院によるカンファレンスの結果、結論は「関連性なし」でした。

 

そもそも、抗がん剤を使用したことによる二次性の急性白血病なら、B細胞性ではなく骨髄性のものになるとか何とか。

 

 「論文も沢山漁ったけど分からん。ここまで来ると研究の領域やね」と言われました。

 

 

いや、前の病気100万人に1人、

今回も100万人に1人

単純計算したら1兆人に1人やぞ!

 

 

何やこれ!

宝くじ買おかな!

 

 

という今日の闘病記でした!

難しかったですね!

最後まで読んでくれてありがとうございました!

また更新します!

さよなら!

 

 

 

 

 

コドックス・エム・アイバック

 

 

え〜らいカッコいい横文字タイトルにして何カッコつけてんねん!とか思った人結構おるんちゃう?笑

 

 

分からん人多いやろなぁ。

 

ちょっと解説しますね。

 

 

 

 

 

   エム・アイバック

 

   am・I・back

 

   Oh...  am  I  back ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何言うてんねん。

「俺戻って来たん?」て。

アホか。

どこも行ってへんわ病室にずっとおるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(麻薬のせいで頭ぶっ飛んでます、すみません)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コドックス・エム・アイバック」は、今回の治療方法の名称です。全然おもんないこと書いてすみません。自分でもおもんないって分かってるのに導入部分これしか考えつかへんかったんです。それに “コドックス” 部分、一文字も処理出来てへんやん。最悪や。何回読み直しても意味分からん。ホンマにすみません。何でも麻薬のせいにするなよ。

 

 

 

 

 以下真面目な解説です。

(この解説が真面目すぎるんで、最初にちょっとふざけたかったんです)

 

 

抗がん剤治療名って、慣例的に、使用する薬品の頭文字を取ってそのまま命名されることが多いんですよね。

 

今回の治療方法「 CODOX-M/IVAC 」は、

 

Cyclophosphamide シクロフォスファミド 

Vincristine (Oncovin) ビンクリスチン、商品名オンコビン

Doxorubicin ドキソルビシン 

high-dose Methotrexate 大量メソトレキセート 

 

CODOX-M投与を Day1からDay15まで、

 

さらにこれが終わってから

 

Ifosfamide イフォスファミド

Etoposide (VP-16) エトポシド

high-dose cytarabine (Ara-C) 大量シタラビン

 

IVAC投与を Day 1’から Day 7’まで

 

これを1クールとして2回以上(推奨3回)行います。

 

 これは米国で効果のあがった、バーキットリンパ腫白血病に最も奏功があると言われている治療になります。

 

 さらに、この抗がん剤治療を始める前のPrephase としてプレドニンの投与もありました(既に終わりました)。

 

 

何の話やねん!と言う方へ、治療の流れを分かりやすく解説すると、

 

 

 

緊急入院

プレドニン投与 [Prephase]

(CODOX-M/IVAC は非常にキツい薬剤なので、いきなり始めると腫瘍がどんどん崩れて血中に大量に溢れます。これを腫瘍崩壊症候群と言い、腎機能に重い負担がかかって、最悪の場合、人工透析が必要になります。これを避けるため、まずはプレドニンというステロイドを投与し、腫瘍を少しずつ壊していきます)

CODOX-M  [15days]

(今ここです。今日がDay6)

好中球・血小板回復待ち(骨髄抑制期間)

(neutrophil count  > 1.0×10^9/L)

(platelet count > 75×10^9/L)

IVAC [7days]

好中球・血小板回復待ち

CODOX-M [15days]

好中球・血小板回復待ち

IVAC [7days]

 

という流れです。

 

骨髄抑制 : 正常な造血細胞も抗がん剤の影響を受けるため、白血球や血小板の血中濃度が低下する。これを骨髄抑制と呼ぶ

好中球 : 白血球のひとつで、白血球のうち約6割を占める。運動性と食作用が著しい(外敵と闘う)

 

 

 ここまでで完全奏功すれば、治療は終了になりますが、そう簡単には行かないのが現状です。

 

 腫瘍を叩き切ったつもりでも、残っていたりすることも多いんですよね。

 

 そこで、治療の次に行う可能性があるのが、「造血幹細胞移植」です。

 

 これは、簡潔に言えば、前回の記事に書いた「造血幹細胞」を、移植するというものです。

 僕の造血幹細胞は、造血の途中で癌化してしまうので、正常に造血することのできるドナーの細胞を移植するのです。

 

 

 造血幹細胞移植には、大きく三通りの方法があります。

 

 ひとつは、「末梢血幹細胞移植」。

さらには、「臍帯血移植」。

そしてもうひとつが、あの「骨髄移植」です。

 

 

 

末梢血: 通常の血管を流れる、いわゆる「血液」だと思ってもらったら大丈夫です

 

 まず、最も古い「骨髄移植」について、説明します。

 

 骨髄移植とは、その名の通り、他人の骨髄液を抜き、患者の骨髄に注入する、というものです。臓器の移植であれば、そんなことをすると「侵入者やんけ!」となる場合が多いですが、骨髄移植はそのリスクが少ないそうです。(まぁ普通に拒否反応はありますが)

 

 ただ、骨髄移植は、ドナーから骨髄液を抜くというのが大変なので、なかなかドナー数も伸びませんでした。

 

 そこで画期的な方法が誕生します。

「末梢血幹細胞移植」と「臍帯血移植」です。

 

 そもそも造血幹細胞は、骨髄にのみ存在すると思われていました。ところが「臍帯血」と呼ばれる、赤ちゃんのへその緒や胎盤の中に含まれている血液にも存在することが明らかになりました。これが「臍帯血移植」です。さらに近年になり、「実は普通の人の血管内にも造血幹細胞が存在してるやないか!」となったわけです。今となっては技術革新も後押しし、献血のように普通に血を抜いて、造血幹細胞だけを取り、残りを戻す、という画期的な方法で造血幹細胞が採取できるようになりました。これが「末梢血幹細胞移植」です。

 

 

じゃあ簡単に移植できるやん?

 

 

と思いますよね、、、

 これが落とし穴です。

 

 

 

皆さんは、自分の「白血球の血液型」をご存知でしょうか?

 

(知ってるわけないやん)

 

AB型とかO型とかいうのは、実は「赤血球の血液型」なんですよね。

 

 同じように、白血球にも血液型があり、これはHLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれています。

 

 HLAも、一般的な血液型と同様に、親から受け継がれるため、兄弟姉妹間では1/4の確率で、HLAの型が一致していると言われています。

 

 ただ。

 

僕は弟がいるんですが、多分一致してないです。それに、彼も昔手術をしているので、使えない、と。

 

 困るんですよね、、、

 

 

 HLAの型が、赤の他人と完全に一致する割合は、珍しい型だと数万分の一にまで下がります。しかしこれが一致しないことには、移植できない。

 

 

 今はHLA型の結果待ちです。怖いね〜。

 

ということで、本日僕が言いたかったのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの血で、救われる命がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということです。

 

まずは、献血をしましょう。

僕は毎日のように赤血球と血小板を輸血されています。

 

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実は、献血された血液の有効期間は、たったの4日間なんです。

だから、常にギリギリなんです。

僕はこれがないと死にます。

どうか献血を。

 

 

 

それから、もし余裕があれば、献血ルームに行ったときに、受付でこう聞いてください。

 

 

骨髄バンクのドナー登録って出来ますか?」

 

 

 

 

 出来ます。お願いします。

京都市内は京都駅前、四条、伏見大手筋の各献血ルーム

 

追記

一応、年齢と体重に制限があります

年齢制限:18歳〜54歳

体重制限:男性45kg~ 女性40kg~

 

 

ドナー登録に必要な血液は、たったの2mLなんです。(献血と同時に、採取してくれます)

 

 

 これであなたのHLAの型が、登録されます。

 

登録だけでいいんです。

もし全国のどこかの患者さんと一致すれば、その時に連絡がきます。

 

http://www.bmdc.jrc.or.jp/pamphlet/data/inochinobaton.pdf

 

 

それから、女性の方へ。

もし子供を授かった場合には、公的臍帯血バンクと提携している産婦人科に行ってみてください。

 

https://www.bs.jrc.or.jp/kk/bbc/special/m6_02_05_saitai_teikyonoonega.html

 

 

 

 よろしくお願いします。

 

 

 もう一度言いますが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの血で、救われる命がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一昨日は七夕でしたね。

どうかこの願いが、届きますように。

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Fight, again.

 

━━━     序文    ━━━━━━━━━━━

 

 

 405日ぶりに、闘病記を再開する。

 

 

 これは、白血病ステージⅣと診断された、少し気の強い20歳大学生の、或る闘病記だ。

 

 

 

 ひとつ、聞きたいことがある。

 こんな人間のことを、あなたはどう思うだろう。

 

 どうしてまた病気に、とか

 生きるの辛そう、とか

 

 確かに、そう思われても仕方ない。

 

 でも、そういう感情を持っているのなら、ここで捨てて欲しい。

 

 

 

僕の人生は、僕の尺度が決める。

 

 

 

 どうか小さな声で同情することなく、大きな声で応援してほしい。

 

 新たな闘病生活を前に、それだけを伝えたかった。

 この闘病記を再び終える日を夢見ながら、僕の生きた証を残すべく、再開する。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 6月28日に緊急入院して、一週間が経ちました。

 

 病名は、今のところ「バーキットリンパ腫」です。

 

 今のところ、と書いたのには深い理由があります。これについて話すには、まず「悪性リンパ腫白血病」というのがどのようなものなのか、それについて話す必要があります。

 

 (追記 : 僕は工学部生なので、細かいところガバガバです。医学部生さん、間違いあったら連絡してください)

 

 

 そもそも、悪性リンパ腫白血病は、骨髄腫を加えて「三大血液がん」と呼ばれています。つまり、血液が癌化する病気です。

 

 ご存知の通り、人間の体内には血液が隅々まで巡っています。この隅々まで張り巡らされている血管が、毛細血管です。血液には血漿赤血球、白血球など様々な成分があり、そのうち毛細血管から漏れ出ることの出来る血漿やリンパ球は、間質液(組織液)と呼ばれています。これが毛細リンパ管に流れ込み、合流してリンパ管を形成しています。また、リンパ管の途中には、リンパ節が存在し、ここでは何本かのリンパ管が合流し、再び流れ出て行きます。そして最終的に、リンパは鎖骨下静脈へ流入し、再び血液に戻るのです。

 

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  ここで、血液・リンパ液の大元となる、多能性(造血)幹細胞について、さらに詳しく書いていこうと思います。多能性(造血)幹細胞とは、白血球やリンパ球、赤血球、血小板と、何にでも分化することのできる、言わば「スーパー細胞」です。

 

 

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多能性の造血幹細胞は、さらに骨髄系幹細胞ないしリンパ球系幹細胞に分化し、それぞれ血液成分、リンパ成分へと成長をしていきます。

 しかし、分化する途中、何らかの原因で成熟が止まってしまい、未分化のままの何の役にも立たない細胞(芽球などと呼ばれる)が異常増殖することがあります。

 

これが、白血病悪性リンパ腫です。

 

 

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上図のように、白血病悪性リンパ腫かという境目は、「どこまで成長した時点で分化が停止したか」で分類されるため、非常に曖昧なのです。そして僕の場合は、リンパ系幹細胞が前駆B細胞となった後、「未成熟B細胞を経て成熟B細胞となる過程」に完全なる異常が生じている、というわけなのです。これはB細胞型リンパ腫と呼ばれます。

 

 

T細胞:骨髄で生成されたリンパ球が胸腺に移送され成熟したもの。免疫反応に関与。

B細胞:骨髄で生成されたリンパ球が、そのまま骨髄内で成熟したもの。免疫反応に関与。

 

 

 B細胞性のリンパ腫には、他に「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(以下DLBCL)」と呼ばれるものもあり、病理の結果ではこちらが出ていました。

 

 つまり、僕は「バーキットリンパ腫」と「DLBCL」の中間病態であると言えます。

 

 さらに近年、「バーキットリンパ腫」は、「バーキットリンパ腫白血病」と表記されるようになっています。これは先程も述べたように、リンパ腫と白血病の境目が非常に曖昧であり、特にバーキットリンパ腫が「悪性リンパ腫に分類されながら、実際は白血病に近い病態である」からなのです。

 

 だから僕は、とりあえず病名を聞かれたとき、分かりやすいように「白血病」と言っているのです。

 

 

 

 (いや、複雑すぎやろ…)

 

 

 この小難しい話は、また追い追いしていきます。今日は入門なので、この辺までで。

 

 

 

  病状についてお話しします。

 

 ステージⅣ、と書きましたが、厳密には違います。

 

 

 そもそも、こういった類の白血病は、発症時に白血病細胞が血液を介して全身に広がっているため、ステージのような病期分類がありません。さらにバーキットリンパ腫は、週単位で進行する高悪性度に分類されるため、そのような病期分類をしたところで、ということもあります。

 

(追記:よくよく確認したら、一応病期分類ありました。ガッツリStage Ⅳ に両足突っ込んでます。医者の嘘つき!笑)

 

 ではなぜ、敢えてステージⅣと書いたのか。

 

 それは僕のPET-CTを見て貰えば分かります。

 

 PET検査とは、癌細胞が他の細胞よりも消費エネルギーが大きいことを利用して、よりグルコースを消費している部分を可視化する検査です。

 

 

 ちなみに、これが正常画像

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僕はこれですよこれ↓

 

 

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 すごい光ってますよね。光っている部分が、癌です。(脳は、もともと消費エネルギーが多いので、この検査では判断しきれませんが)

 

 

 

 背骨&骨盤、光りすぎやろオイ、、、

 

 

 

 

一昨日、本当に痛くてベッドの上で這いずり回って叫んだ挙句、モルヒネまで打ってもらったんですが、まぁ当然と言えば当然ですよね。

 

 

 あ、医療用麻薬って凄いんですよ。

僕みたいに24時間静注使用を続けても、麻薬中毒にならないのです。

 

いや、それにしても、めっちゃフワ〜っとするあの浮遊感、、、

大麻やったことある奴なら分かると思います)

 

 

 話が逸れました。とにかく、骨髄がここまでやられていると、普通の癌ならステージⅣ(末期)に分類されちゃうんですよね。(医師談)

 

 

 

 それから、僕は眼底に多量の出血があったり(視力かなり落ちました)、脳内の硬膜と呼ばれる部分にも癌細胞が浸潤していたりと、おそらく中枢神経もやられている可能性があります。

 

 バーキットリンパ腫白血病は、一般に、よく抗がん剤の効く病気だとは言われていますが

 

 *LDH上昇

*骨髄浸潤

*中枢神経浸潤

 

は大きな予後不良因子とされており、完全に当てはまっています。

 

 ま、どう転ぶかは、神のみぞ知る、というところですよね。

 

 今日はこの辺りにしておきます。

また少しずつ更新していきます。

末長くお付き合いくださいませ。

 

 

明日も生きます。

 

 

 

 

P.S. お見舞い結構来てくれて、本当に嬉しいです。めっちゃ元気出る。ありがとうみんな。

 

 

砂嵐 | 合掌

 

 昨日、ようやく退院しました。特に騒ぎ立てるほどでもなく、やるべき事務的なことだけを淡々とやって病院をあとにし、10分遅れで1限に出席しました。

 

 

 昨年の10月25日に風邪を引きました。19歳の誕生日の、ちょうど1週間後でした。あれが全ての始まりでした。39度の高熱が下がらなかったものの、しんどくもなかったので大学に休まず通い続けました。今思えばそれは正解でした。あのとき、講義室で風邪をうつされなかったり、風邪を家で療養して安静にしていたら、癌の発見も遅れていただろうし、多分死んでいました。幸か不幸か、とにかく単なる風邪をこじらせて肺炎になり、とある病院に入院しました。それが必然だったのかどうかなんて確かめようもありません。ちょうど7ヶ月前の出来事です。

 

 その病院を去ったのは、記憶が正しければ11月6日でした。真っ白になっていた肺は、1週間の点滴治療によって、CT画像を見る限りは綺麗に戻っていました。ただその去り際、もう名前も顔も忘れた主治医に、親と一緒に呼ばれました。その肺のモノクロ画像を見せながら、「ここね、ここです」と影を指されて京大病院の紹介状を書かれた時点では、まさか自分の身体が致死率の高い癌に蝕まれているなんて思いもしませんでした。

 

 それから3週間経ち、初めて京大病院を訪ねました。11月24日でした。ちょうど半年前です。あの日、癌を告げられた日、その時点から何か自分の中での世界線が変わったような気がしました。そしてそれからの半年の闘いというのは、重苦しくて長い長い闘いでした。

 

 

 癌というのは、早かれ遅かれ多くの人が通る道です。それが何年先、何十年先になるかは分かりませんが、何となく、僕は病気で死ぬなら癌で死ぬ気がします。あなたもわたしも、現在の統計から言えば、癌で死ぬ確率は非常に高いのです。

 

 この病気は、精神的にも肉体的にも、自分自身との闘いです。自身を攻撃する自分の細胞と闘い、自身の健康な細胞まで殺す薬剤の副作用に耐え、そうして死という概念と一対一で向き合う、そんな病気です。今振り返ってみて、どうやってこんな自分がその砂嵐を抜けてきたのか、それはよく分かりません。ただ、自分には幸いにも、たったの19年で数知れない素晴らしい人々と出会い、そして彼ら彼女らに何度も何度も支えていただきました。そしてこの病気になって知り合った方々も何十人もいて、やはり精神面で何度も助けていただきました。

 

 言葉にすると驚くほどに薄くなりますが、「人との出会いは大切にしなければならない、その存在はいつかきっと自分を支えてくれる」というのが、この半年間で身をもって感じられた結論です。死というのは孤独とともにあって、孤独は死を呼びます。人は支え合うことでしか生きられないのです。精神の死と身体の死は表裏一体で、だから古代ローマの時代から "a sound mind in a sound body" が叫ばれてきたのかもしれません。

 

 

 ところで、僕はこの半年間で神とか仏とかを強く信じるようになりました。別にそれまで信じていなかったわけでもないのですが、ある種の信仰が精神的な支えになるのは間違いなく事実で、だからこそ太陽が地球の周りを回っていると言われた時代のさらに前から、ずっと宗教が存在しているのだと思います。科学がいくら発展しようと、人智の及ばない領域というのは確実に存在していて、そういう部分が人の生き死にを左右しているような気もします。

 

 京大病院には構内に全快地蔵という地蔵菩薩がひっそりと佇んでいて、ここには何度も手を合わせました。目を閉じて両手を合わせるという行為は、精神を極限まで落ち着かせてくれます。この瞬間にだけ、自分が本当に何を望んでいるかが分かる気がします。

  

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 退院の朝も手を合わせました。今望むことは、自分の周りの人々が幸せでいられるように、ということだけです。自分自身の将来の健康を願うのは、何だか居心地が悪くなるのであまりしません。取り敢えずは癌が寛解したのだし、何不自由なく今を生きているのだから、今にだけ感謝すればいいと思います。合掌。来年のことを言うと鬼が笑う。

 

 

 最後に、村上春樹著、「海辺のカフカ」の一節を。

 

 ある場合には運命っていうのは、絶えまなく進行方向を変える局地的な砂嵐に似ている。君はそれを避けようと足取りを変える。そうすると、嵐も君に合わせるように足取りを変える。君はもう一度足取りを変える。すると嵐もまた同じように足取りを変える。何度でも何度でも、まるで夜明け前に死神と踊る不吉なダンスみたいに、それが繰り返される。なぜかといえば、その嵐はどこか遠くからやってきた無関係な何かじゃないからだ。そいつはつまり、君自身のことなんだ。君の中にあるなにかなんだ。だから君にできることといえば、あきらめてその嵐のなかにまっすぐ足を踏みいれ、砂が入らないように目と耳をしっかりふさぎ、一歩一歩とおり抜けていくことだけだ。

(中略)

そしてもちろん、君はじっさいにそいつをくぐり抜けることになる。そのはげしい砂嵐を。形而上的で象徴的な砂嵐を。でも形而上的であり象徴的でありながら、同時にそいつは千の剃刀のようにするどく生身を切り裂くんだ。何人もの人たちがそこで血を流し、君自身もまた血を流すだろう。暖かくて赤い血だ。君は両手にその血を受けるだろう。それは君の血であり、ほかの人たちの血でもある。

 そしてその砂嵐が終わったとき、どうやって自分がそいつをくぐり抜けて生きのびることができたのか、君にはよく理解できないはずだ。いやほんとうにそいつが去ってしまったのかどうかも確かじゃないはずだ。でもひとつだけはっきりしていることがある。その嵐から出てきた君は、そこに足を踏みいれたときの君じゃないっていうことだ。そう、それが砂嵐というものの意味なんだ。 

 

  癌という砂嵐に意味があるとするならば、それは「僕自身を変えた」ということだと思います。砂嵐に足を踏みいれた半年前の自分の文章を見ていると、本当に一生懸命拙いことを書いています。でも僕はもう、そういう人間ではありません。そしてこの半年間で、「それは君の血であり、ほかの人たちの血でもある。」ということをありありと感じられたのも、これからの自分の人生の中で大きな意味を持つと思います。砂嵐が去ったのかどうか、それは分かりませんが、少なくとも今は砂嵐は見えない。五月晴れの青空が地平線まで広がっています。再発や併発があるかどうかなんて、人智の及ぶ領域ではありません。人間にできることなんて、運命から逃げずに嵐に足を踏みいれ、目と耳をふさいで手を合わせるくらいなものなのです。

 

  そして僕にとっての癌というのは、決して "どこか遠くからやってきた無関係な何か" ではなかったのです。人生における嵐というのは、偶然というよりもむしろ必然的にやってきます。全てが偶然の様相を呈した必然なのです。そしてその嵐は、結果的に自身を形成する栄養素になるんです。嵐に傷ついて涙ばかり流していても、血は止めどなく流れます。つらいことに対して「耐えられない」という人は、たいてい気を強く持とうとするあまり、目も耳も閉じていません。でも砂嵐の中で物事を見極めたり聞き分けたりできる人間なんてごく一部しかいないのです。だからしっかり目と耳を塞ぐというのは、自分を見失わず、なおかつ自身の声と鼓動に耳をすますという点で、非常に重要だと思います。人間は誰しも、何かしらの砂嵐の渦中に定期的に置かれることになっているのです。その砂嵐がいつどこで始まり、いつどこで終わるかなんて、誰にも分かりません。確かに砂嵐には無慈悲な側面がありますが、ただひたすらに手を合わせ、一歩一歩進んでいけば、血が尽きるまでには止むようにできていると思うんです。そして目と耳を閉じるというのは自分を守る行為であって、決して逃げることではないと思います。

 

 砂嵐は鍛錬に似ています。トレーニングによって傷ついた筋肉が修復されることで肥大していくように、砂嵐によって傷ついた精神は修復と共に強く逞しくなるのです。重要なのは正しい方法で鍛錬をすることであって、泣いてばかりいては傷つくだけで、精神が肉離れをおこして再起不能になります。砂嵐は、精神を殺傷する力と精神を成長させる可能性を、同時に秘めているのです。その両者は紙一重に存在しています。

 

 ただ僕自身は、この半年間を振り返って、もう二度とこんな砂嵐には逢いたくないとも感じています。もはやそんな気力もないし、あんなものをどうやってくぐり抜けて今生きているのかも分かりません。一方で、この砂嵐は自分自身を大きく成長させてくれたのもやはり事実です。死というのは人生において避けては通れない題目であって、それに向き合うということは、すなわち生に向き合うことと同等な気がします。生きているということの尊さを、この砂嵐に教えてもらいました。それから、人との繋がりをひとつずつ、ゆっくりと時間をかけて再確認できました。だから、例えそれが偽善に聞こえようと、やっぱりこう思います。これは心の底から湧き出すように感じていることなんです。

 

 

癌になって、良かった。

 

 

昨年の12月8日に始めた闘病記も、一旦ピリオドを迎えることができました。この日をどれほど待ち侘びたことか。

 

本当に、ありがとうございました。

 

合掌。

支えていただいた全ての方々と、それから砂嵐に。

 

 

 

劇的ビフォーアフター

 

 傷口は順調に治ってきました。このまま上手くいけば、おそらく今月の15日あたりに、傷口に自分のお腹の皮膚を切り取って移植する手術をしたあと、晴れて退院となりそうです。

 

 言い忘れていましたが、今は形成外科にいます。泌尿器科、呼吸器外科、形成外科と、色んな病棟を経験しましたが、本当に患者さんの層も、症状の程度も、生きる意志も、それぞれによって全く違うんですよね。驚きです。

 

 ところで。ゴールデンウィークもずっと入院、というのは耐えられなかったので、主治医に「大型連休なんで、出来れば家に帰りたいです」と伝えたところ、あまり動かないなら、とお許しをいただきました。でも本当に家でじっとしていると思いますか?そんなわけないでしょ。色んな所に行って、楽しい楽しいゴールデンウィークを過ごさせていただきました。バレたら怒られるかな。でもほら、病気と対峙するうえで、気持ちの面って非常に重要なので、気分転換は本当に必要です。言い訳がましいね。

 

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 医療機器片手に、後輩の陸上の試合の応援にも行きました。

 陸上は9年続けていたので、100回以上ここに来てますが、いつも新鮮です。来るたびに空気感にうずうずするんですよね。筋肉も骨も切っちゃったので、あの頃のようには決して走れないけれど、当時の感覚だけははっきりと覚えています。高校生っていいなぁ、と思いました。後輩達も本当に逞しくなっていました。劇的変化。インハイ路線頑張って欲しいな。

 

 2日間、炎天下のもとで応援していたので、僕の腕の色も喉の調子も、劇的なビフォーアフターを遂げました。

 

 さて。タイトル通り、今日は割と劇的なビフォーアフターを見ていただきましょう。僕の髪の毛の変遷です。

 

 …と、髪の毛のビフォーを載せようと思ったのですが、あまりに恥ずかしくなったのでやめておきます。昨年の12月30日に抗ガン剤の影響で全て抜け落ちました。

 

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 風呂に1回入っただけでこんなに抜けるんですよ。もうホラーですよホラー。シャワー浴びたら水と一緒に髪の毛が流れていくんですよ。夢に出てくるわ。

 

 

当時のイメージはこんな感じです。友蔵。

 

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 坊主じゃなくてハゲですからね。そりゃ最初は精神的にやられましたよ。でも今はもうすっかり生えてきました。割と伸びるの早くないですか⁇

 

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 …嘘です。これはウイッグです。

 

 本当にみんな気づかないんですよね。人毛50%使用とかなので、近くで見ても全くわかりません。凄いよな〜

 

 あ、髪の毛の長い女性の方々は、もし彼氏と別れたりして思い切ってショートにすることがあれば、是非髪の毛を寄付してあげてください。僕は普通にウイッグを買いましたが、以下のURL先のNPO法人では、頭髪の悩みを持つ18歳以下の子供に無償で医療用ウィッグを提供しています。ウィッグを作るための人毛は慢性的に不足状態なので、ヘアードネーションにぜひぜひご協力を。

NPO法人 JAPAN Hair Donation and Charity

 

 ただ釘を刺すようで悪いんですが、僕はショートよりは断然ロング派です。

 

 

 で、現在の僕の髪の毛はこんな感じです。

 

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いや笑うなよマジで。この写真載せるん割と勇気いるんやで。笑

 

 もともと髪質が悪いので天パになるかなと思っていたら、割と質のいい髪の毛が生えてきたので安心しました。野球少年と違って、触ってもサラサラなんですよ。元に戻るまではあと半年くらいかかるかな...

 

 

 

 久々に帰宅することが出来たので、ここ数日は暇さえあればピアノを弾いてました。陸上は9年続けたと言いましたが、ピアノは3歳から8年間やってました。これも最高の気分転換になるんですよ。逆に入院で長らく触ってないとイライラしてきます。今は超自己流で趣味がてらに弾いてます。

 

 今日でゴールデンウィークも終わりですね。明日からまた頑張りましょう。

 

 それでは最後に聞いてください。もちろんこの曲、イヤホン推奨です。大改造‼︎劇的ビフォーアフターより、松谷卓作曲、「匠/TAKUMI」。

 

youtu.be

 

 

スーパーバグ・クライシス

 

 風邪で病院に行ったとき、「取り敢えず抗生物質出しときますね〜」とか言われたことありませんか?

 

 それ、ヤブ医者です。

 

 日本では、昔から抗生剤が「気休めの薬」として提供されてきました。僕も風邪になるたびに、白っぽい袋に入った粉薬を処方されて飲まされた記憶があります。

 

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 こんなやつですね。じつはこの味結構好きだったんですよ。舌の上で溶けて行く感覚とか懐かしいですね。体が大きくなって粉薬が錠剤に変わったとき、少し残念でした。

 

 それはさておき。 風邪に対して抗生物質を処方する、というのは、全くの

「無駄」

だということが分かっているようです。抗生物質は「細菌(バクテリア)」には効きますが「ウイルス」には効きません。インフルエンザの場合に使われるリレンザタミフルは「抗ウイルス剤」で、「抗生物質」とは全く異なります。風邪の場合は、原因となりうる100種類以上のウイルスを特定するよりも、自然の免疫力で治した方が早い、というわけです。

 

アメリカでは、医者は基本的には抗生剤を処方しないそうです。 厳しい規制があるらしく、風邪はおろか、他のウイルス性の病気だったとしても、抗生物質の処方はほとんどしてくれないそうです。当然といえば当然ですが。不要な抗生物質の処方は行わない、というのが世界的な医療のスタンスになってきているようですね。風邪ぐらい冷えピタ貼って寝とけや、みたいに言ってくれる医者の方がいい医者ですよ。

 

 

 どうしてこんな話をしているのかというと、僕の傷口から、とあるウイルスが検出されたからです。

 

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カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE)。

 

これは、「抗生物質耐性菌」と呼ばれるもので、その名の通り、抗生物質が効かないウイルスです。近年、猛威を振るうようになり、2014年にWHOが警鐘を鳴らしてからは、世界的に危機意識を持たれるようになったみたいです。

 

 どうして最近になって問題化してきたかというと、世界的な抗生物質の乱用が原因だそうです。抗生物質というのは、使い続けるとそれに耐性を持つ菌が生まれ(ウイルスってすごいね)、耐性を持った菌のDNAが伝達され、それに対して人間がさらに強い抗生物質を投与し…と続くうちに、どんどん強力な菌が生まれるようです。そして感染症の最終手段として使用され、最強の抗生剤と言われるカルバペネム系の抗生物質に強い耐性を持つ菌が誕生しました。これがCRE、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌というわけです。こういった細菌はsuperbug(スーパー耐性菌)と呼ばれています。世界初の抗生剤ペニシリンが生まれて90年。ホイホイと薬を使う人間に対して、ウイルスがついに攻勢にまわったというところですかね。

 

 

 どれほど危険なものなのかを調べてみたところ、2050年には年間1000万人が死亡すると予測されているそうです。癌による死者数が現在世界で年間900万人なので、それ以上ということになりますね。キャメロン首相が "medical dark age" と恐れ、オバマ大統領でさえ "most pressing public health issues facing the world today" と危機感を募らせているのも頷けます。あのアメリカでさえ、今後さらに抗生物質の使用を規制していくそうですよ。日本の厚生労働省は何しとんねん先月ようやく動き出したようです)。

 

 現在、国内ではカルバペネム耐性腸内細菌科細菌に年間1700人程が感染し、60人程が死亡しています。全世界では年間70万人が命を落としています。僕は保菌しているだけで、感染しているというわけではありません(傷の治りが遅い原因がこの菌のせいかどうかはまだ分からないようです)。ただ、血管や骨に入ると、敗血症などの重症になる可能性があり、最悪の場合死にます。血流感染の死亡率は40〜50%とされているそうです。

 

 

 ー  と、こんな感じで書くと割と深刻そうに見えますが、別にそういうわけでもないです。というのも、スーパー耐性菌というのは、健康な人には全く無害な菌です。ただ、手術直後の患者や免疫力の弱っている患者に対しては、非常に危険だ、ということです。

 

 あれですね、緑膿菌とかと同じ話です(余談になりますが)。植物の表面などに付着している緑膿菌は、もちろん健康な人には何の問題もないですが、免疫の弱った患者には危険、最悪の場合血液や気管、尿路などに感染して死に至るということで、多くの病院ではお見舞いのお花を禁止しています。京大病院はもちろん禁止で、お見舞いでお花を持ってきてくださった方には申し訳なかったのですが、ナースステーションで預かってもらったあと、親に家に持って帰ってもらってました。あれは禁止のくせして地下の売店で花売ってるのが悪いねん…。

 

 

 話がそれましたね。何の話やっけ。とにかく、健康な人がお花をベタベタ触っても大丈夫なように、僕が傷口をベタベタ触っても大丈夫だ、ということです。

 

 ただ、医療の進歩とウイルスの進化のイタチごっこは、行く末が案じられて非常に心配です。目には目を、なんてやってたら、いつか人類滅ぼされますよ。スーパー耐性菌が蔓延しだしたら、ただの風邪くらいでも、免疫低下に付け込まれて死んでしまうことになります。あるいは、先端医療をいくら施しても、多くの人が術後の全く関係ない感染で死亡してしまう、ということが十分あり得るわけです(これが危惧されています)。日本では2010年に帝京大学病院の院内感染で患者46人が感染、うち27人が死亡して問題になっていました。まさに現代医療の終焉ですね。果たして、「スーパーバグ・クライシス」と呼ばれるこの状況に打開の道はあるのでしょうか…。

 

 

 

 とりあえず、今度発熱して医者にかかったとき、ただの風邪なのにフロモックスを処方しようとしたら、「そんなもんいらんわボケ!」とでも言って帰ってやろうと思います。みなさんも「黙れヤブ医者!」くらいの勢いで噛み付いて、「ん、あれ、どうして風邪なのに抗生物質を処方なさるんですか…?」と根掘り葉堀り聞いてくださいね(もちろん正当な理由があって処方される場合もありますが)。あなたの意地悪な質問が世界を救います。