或る闘病記

生きるって楽しい。

Dogma ードグマー

 

ドグマ。

 

日本語では、教義・教条などと訳されます。

固定された堅固な信条のことです。

 

 

 生死の境で生きる患者達には、あるドグマがあります。

 

 

 

それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 病とは、不幸そのものではない」

 

 

 

 

 

 

 

というものです。

 病によって、気付かされることが沢山あることを知っているからです。

 僕にとっての病とは、”幸福な試練” です。

 自分がどう生きてきたのか、どう生きるのか、それを試される時間です。

 僕がもし恵まれぬ生き方をしてきたのなら、この試練も不幸なものになったのかもしれない。

 でも僕は、20年間を通して、数多くの尊敬できる人々や、支えてくれる仲間達と出会ってきました。

 それが、この試練さえも、むしろ幸福な時間にしてくれるんです。

 毎日のように誰かが来てくれて、たわいもない昔話で馬鹿笑いして、帰って行く。

 その度に、幸せだなぁ、と思うんです。

 このドグマは、おそらく生死の境を生きる者にしか理解しえないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。

ドグマはドグマでも、今日は生きとし生けるものに授けられた、あのドグマの話をします。

 

 

そうです。

セントラル・ドグマの話です。

 

 

 

 生物選択者ならずとも、一度は耳にしたことがあると思います。

 

 

 

 セントラル・ドグマとは、1958年にフランシス・クリックにより提唱された、分子生物学の大原理のことです。

 

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 大雑把に言うと、私達の身体を構成するあらゆるタンパク質が、DNAを基に、RNAを介して生成されている、という一連の流れのことです。

 

 私達の身体は、約60兆個の細胞で形成されています。その細胞の集まりが組織(例えば筋肉)であり、組織の集まりを器官(例えば心臓)と呼んでいます。

追記: なんか2013年に試算されたらしく、学術的には人間の細胞数は37兆個とされてるらしいです)

 

 つまり細胞は、身体の構成要素の根幹とも言えます。

 

 (何でこんな噛み砕いてんねん舐めんなよって方へ、後で後悔するレベルで難しいこと言うんで最後までついて来てくださいね!)

 

 

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 細胞のうち70%は水分で形成されています。そして次に多いのが、タンパク質です。このタンパク質こそが、その細胞の性質を司っています。

 

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 タンパク質は、細胞内で作られます。つまり、このセントラルドグマ(DNA→RNA→タンパク質)は、細胞内での話なのです。

 

 因みに、セントラルドグマは、提唱されてから60年で変遷を遂げ、現在はこんな感じになってます。これについて話すと無茶苦茶時間かかるのでやめます。今日は「複製」だけについて書きます。

 

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私達の細胞は、分裂を繰り返すことでその数を増やします。この時、細胞内のDNAも、分裂前と同じものを受け継いでいます。これをDNAの複製と言い、細胞は、分裂前に一揃えのDNAをコピーすることで2倍に増やしてから、分裂の際にそれぞれの細胞へと同じDNAを格納しているのです。

 

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まぁ大学受験で生物選択した人は何てことない話ですよね。ここは重要じゃないんで飛ばします。実を言うと僕もよくわかりません。

 

 

 でも最初はたった1つの細胞から始まった私達の身体が、こんなセントラルドグマを通して60兆個の細胞に発展していくの、凄いですよね。

 

 

 

 さて、ここから今日の本題です。

 

 

 

 このセントラルドグマ、普通にミスるんです。

数字で言うと、「複製」を10億分の1の確率でミスります。

 

 60兆個も細胞あるのに10億分の1でミスるの、結構ヤバくない?

 

 2017年のNature誌に掲載された米国チームの研究によれば、癌を引き起こす原因の3分の2近くは、このDNAの複製エラーによるものであるとされています。

 

一方で、この複製ミスによって出現したエラー細胞も、殆どは「死滅」という道を辿る、というのも事実です。この細胞の死は「アポトーシス」と呼ばれ、予め遺伝子で決められたメカニズムによって半ば自殺的に細胞は死滅するのです。こうして、古い細胞は新しい細胞と入れ替わっていくのです。例えばオタマジャクシの尻尾が消失したりするのも、その一種だと考えられています。

 

 ところが、稀に、複製エラーによって「アポトーシス」のプログラムがなくなり、「自殺」できなくなることがあります。こうなると細胞は増殖だけを続け、薬剤で死滅させない限り身体のエネルギーを奪い続けます。

 

これこそが、癌です。

 

 

 為になる話ですね〜(自分で言うなよ)

 さらに専門的になるんですが、最後まで読んでくださいね、、、

 

 

 じゃあお前も複製エラーなん?

 と思ったそこのあなた。

一昨年の癌は、複製エラーです。正解です。

ところが今回は、複製エラーではありません。

 

今回は、「転座」です。

 

 

てんざ〜

 

 

 

転座とは、いわゆる「染色体異常」です。

 

ここで「DNA」「染色体」「遺伝子」の3つがこんがらがってきた人も多いと思うので、整理します。

 

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塩基対の持つ情報を遺伝子、塩基対を介して2本のポリヌクレオチド鎖が二重螺旋構造を取っているものがDNA、このDNAが折りたたまれたものが染色体です。

 

 そしてDNAの複製エラーが癌、

 染色体の転座が白血病なのです。

 

(厳密には違います。こういう言い方すると偉い人が飛んできて怒るかなぁ)

 

 次に、「転座」について詳しくみていきます。

 

 

 みなさんご存知の通り、人間には1番染色体〜22番染色体と、X染色体・Y染色体の合わせて46本の染色体が存在します。

 

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 この46本の染色体のうち、いずれか2本が途中で交換されてしまうのが、「転座」です。

(どうして転座が起こるのかは、未だに分かっていません)

 

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 転座が起こった異常な染色体が、セントラルドグマの中に組み込まれて転写・翻訳されることで、異常なタンパク質が生成され、異常な細胞となる。これが白血病やリンパ腫のメカニズムだと言われています。

 

例えば、「バーキットリンパ腫」の場合は、その80%において、8番染色体と14番染色体の相互転座によってB細胞に発癌します。

 

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具体的には、免疫グロブリン重鎖(IGH)遺伝子とC-MYC遺伝子の切断によるものです。

 

 

これによりC-MYC遺伝子が過剰発現している状態が、バーキットリンパ腫/白血病の特徴だと言われています。

 

 ところが。

 

僕の場合は、その80%に入っていませんでした。

 

つまり、8番染色体と14番染色体の相互転座は見られなかった、しかしながらC-MYC遺伝子は過剰発現していた、ということらしいです。

 

「なんでなんですか?」

 

って主治医にも担当医にも聞きましたが、「分からん」って言われました。おそらく、バーキットリンパ腫/白血病と、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の中間に位置する病態だからかな? もう研究の領域だそうです。

 

 研修医にも聞いてみようかな〜(笑)

 

 

ここまで読んでくれた皆さんは、多分バーキットリンパ腫白血病について、担当研修医(京大医学部卒)より絶対詳しくなりました。

 

 

 最後に。

 

よく聞かれるんですよね、「今回の病気と前の病気、関係あるん?」って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ないです。

京大病院によるカンファレンスの結果、結論は「関連性なし」でした。

 

そもそも、抗がん剤を使用したことによる二次性の急性白血病なら、B細胞性ではなく骨髄性のものになるとか何とか。

 

 「論文も沢山漁ったけど分からん。ここまで来ると研究の領域やね」と言われました。

 

 

いや、前の病気100万人に1人、

今回も100万人に1人

単純計算したら1兆人に1人やぞ!

 

 

何やこれ!

宝くじ買おかな!

 

 

という今日の闘病記でした!

難しかったですね!

最後まで読んでくれてありがとうございました!

また更新します!

さよなら!