或る闘病記

生きるって楽しい。

骨髄移植の “ウラ側”

 

 こんばんは!

 今日無菌室から出られました!今は通常個室でのんびりしてます。いちばん端っこの部屋なので景色がいいよ〜。

 

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 これがどこだか分かったあなたは京大生ですね!同士!!

 

 

 さてさて。

 

 本日は骨髄移植について復習してから、「骨髄移植の “ウラ側” 」について、雑学みたいなことを延々と書いていきたいと思います!!(ちなみに4,000字を超えてしまったので、書き切れなかった分は明日に回します! お楽しみに!!)

 

 

 

今日の 「 “ウラ側” 」は3本立て!!

 

 

1. 参加してる臨床研究について教えて!

 

 

2. 骨髄って誰がどうやって運ぶの?

 

 

3. ドナーさんってどんなことするの? ドナーになるには?

 

 

 

 どれも気になりますね〜 気にならない?笑

 

 

 ではでは。

 まず骨髄移植について復習ですね。

 

 骨髄移植は、造血幹細胞移植のひとつの方法です。骨髄に存在する血の元、「造血幹細胞」を、ドナーさんから採取して患者の静脈に注入するというものです。至ってシンプル。

 

 

 患者に注入された造血幹細胞は、その後血液に乗って全身に広がっていきます。そして身体中を巡る間に、肺や肝臓、脾臓などの臓器にその多くを捉えられてしまうのですが、一部は骨髄にまで到達します。骨髄には「ニッチ」と呼ばれる、造血幹細胞が過ごしやすい微小空間が各所に存在していて、造血幹細胞がそこに落ち着き、造血を開始すると「生着」と呼ばれます。この生着までには、およそ3週間かかります。

 

 

 

 僕はようやく生着しました!!

 細胞よくやった!! おめでとう!!!!

 

 

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 で、ニッチのイメージはこんな感じです。ニッチについては医学生すら知らないと思います。現在急速に研究が進んでいる、骨髄の中の「微小環境」です。実はこのニッチの中で、造血幹細胞は眠るのです。

 

 

 

 

 

 細胞が眠る?

 

 

 

 

  

そうです。ニッチの中の造血幹細胞は、細胞分裂したりしないように保護されて完全に眠らされます。なぜならば、造血幹細胞というのは非常に数が限られているため、ちゃんと保存しておく機構が必要だからです。そして、必要な時に起こされ、2つに分裂します。

 

 

 分裂した造血幹細胞のうち、片方は様々な血球に分化していきます。分裂、分裂、また分裂を繰り返して赤血球や白血球や血小板など、ひとつの細胞からいくつもの血球になるのです。

 

 一方、もう片方の造血幹細胞は、また眠らされます。そうすることで造血幹細胞の数が減らないようにしているのです。これを「自己複製能」と言います。

 

これ以上は研究の領域になるのでやめておきますね!

 

 

 

では今から、骨髄移植の「ウラ側」について、いくつか話していこうと思います。

 

 

 

 

まずはこちら!

 

参加してる臨床研究について教えて!

 

 

 

はい、教えてあげましょう。

 

参加してる臨床研究は、事業や調査も含めると全部で7つです。

 

 

 

 

な、7つ!!!!

 

 

 

結構多くないですか?笑

 

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これが、その同意書やら説明文書やらです。長いものだと数十ページに及びます。

 

 

 

ひとつずつ、簡単に説明していきますね。

 

まずは単純な事業と調査から。

 

1. 造血幹細胞移植医療の全国調査

 

 これは、移植後の年齢別・性別・治療法別の再発率や生存率等を調査するものです。

 

2. 生体資料の保管と将来の研究利用

 

 僕から採取された骨髄液などのあらゆる生体資料は、京都大学での研究に役立てられます。

 

 

3. 非血縁者間骨髄・末梢血幹細胞移植における検体保存事業

 

 これも上と同じ感じです。

 

 

 

 

次に、臨床研究です。

 

4. 若年男性のがん患者及び免疫疾患患者における妊孕性温存のための精子凍結保存

 

 大量の抗がん剤放射線を浴びると、精子卵子は死んで、一生作れなくなる場合が多いです。そのため、治療前に保存します。保存した精子の状態の評価や、後々の体外受精による妊娠に関する評価などが、研究に利用されます。

 

 

5. 造血器疾患における遺伝子異常・エピジェネティクス異常の網羅的研究解析

 

 

 白血病の原因は、未だに解明されていません。この研究は、遺伝子異常のある患者の細胞を解析し、白血病をはじめとする造血器疾患の解明を進める研究です。

 

 

6. 造血器疾患治療後の常在細菌叢の変化と、合併症発症リスクとの関連解析

 

化学療法や放射線治療をした後、多くの腸内細菌が死に、バランスが乱れてしまいます。このバランスの乱れが副作用を及ぼすかどうか、関連性を研究するものです。

 

 

7. HLA1座不適合非血縁者間骨髄移植における従来型GVHD予防法と抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン併用GVHD予防法の無作為割付比較試験

 

 

これは、ある新薬を使うことで移植後に起きるGVHDを防げるかどうか、という研究です。

 

 

 注 : GVHD (graft-versus-host disease)

移植片対宿主病と呼ばれる、「移植片vs宿主」の病気。移植に伴う拒絶反応にも近いけれど、普通の臓器移植は「移植されてきたもの(移植片)患者(宿主)の白血球攻撃する」なのに対して、造血幹細胞移植では「移植されてきた細胞の白血球(移植片)患者(宿主)攻撃する」という違いがある。下図参照。

 

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 以上です!!

 

 えらい長々と書いてしまいました(笑)

 

これだけの臨床研究に参加してるんですよね。僕が病気になることで、今後新たに救われる命もあるんです。

 

 

割とガチで、京都大学ノーベル賞の手助けをしています(笑)

 

 

 

 次に!

 

骨髄って誰がどうやって運ぶの?

 

 

これ、知ってますか? 僕も今回初めて知りました。

 

じゃん!

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そうです。運ぶのは日本通運さん!民間委託なんですね!

 

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専用車で運びます。今回、搬送費は約6万円でした!!

 

6万円と言うと高いと思われるかもしれないですが、妥当です。トラック一台貸しきるのでね。しかも、ドナーさんが近畿圏内だったので、これでも安上がりな方でした。

 

 

 「ドナーさんが遠方の場合はどうするの?」

 

 

 これはいい質問ですね。もちろん飛行機を使います(笑)こうなると10万円コースになりますよね。空港では中身の検査があるそうで、血の入ったバッグを見ると空港関係者も流石に驚くとか。

 

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運ぶ際のルートは綿密に計画して代替ルートをいくつも用意するそうで、特に天候による通行止めや欠航には最大の注意が必要だそうです。

 

こんな運び屋の仕事、絶対面白いやん(笑)

 

 

 さてさて、最後に。

 

 

ドナーさんってどんなことするの? ドナーになるには?

 

 

 ドナーの登録は、各都道府県の保健所や献血ルームで行えます。京都だと四条、京都駅前、伏見大手筋に献血ルームがあります。

 

 

 

 献血に行った時に、受付で「ドナーの登録がしたいです」と言えば丁寧に教えてくれます。そして2mLの血液を取れば、おしまいです。登録だけならすぐに終わります。18歳〜54歳、体重40kg以上(男性45kg以上)なら誰でも大丈夫!! もちろん、献血せずドナー登録だけでもOK!

 

 

あとはドナー候補者に選ばれるのを待つだけです。といっても、実は登録者の4割が、ドナー候補に選ばれるのです。(つまり、それだけドナーが足りないということです)

 

 

 

 もしドナー候補者に選ばれたら。

 骨髄バンクから郵便物がきます。

「ドナー候補者に選ばれました」というやつです。

 

 

 患者1人につき、ドナー候補は5人までと決まっています。あなたはその5人の1人。断っても大丈夫。仕事があるかもしれないし、家庭だってあるかもしれない。だから、登録だけでいいんです。強制されることは絶対ありません。

 

 

 もし、OKなら。渡航歴などのアンケートに答え、返信用封筒で返信します。

 

すると数日後に骨髄移植コーディネーターから電話がかかってきます。返信内容の再確認と、本人・家族の意思確認、病歴などを聞かれます。

 

 そして、その2週間後くらいに近くの総合病院に出向きます。説明や問診を受け、採血されます。この採血結果が大丈夫なら、「一次合格」の電話があります。

 

一次合格後は早いです。5人のうちの合格者の中から、健康状態や年齢などを鑑みて、最も良いと思われる1人を患者さんの主治医が選定します。これで「二次合格」となるのです。するとすぐに、コーディネーターは「ドナーとして選ばれました」という電話をかけます。

 

 

しばらくして移植日が決まると、「最終同意面談」があります。本人とその家族、医師、コーディネーター、そして立会人も同席します。

 

 立会人が同席する理由は、「自らの意思かどうか、ドナーとなることを強制されていないか、を監視するため」です。徹底していますね。

 

 

 その後は、再び検査や自己血の採取(提供後に血が少なくなるため)を行います。激しい運動は控えるように言われます。アルコールは入院前日までは飲めます。

 

 

 そして入院の日。移植日の前日に入院し、3泊4日病院で過ごします。食事制限はありません。骨髄の採取は全身麻酔下で行うので、全く痛くないです。麻酔が切れても、1日ほど腰に違和感が残る程度で、至って普通です。もちろん個室でのvip扱いで、入院費は全額、提供される患者側の負担になります。

 

 

 

、、、と、こんな感じです! 

いかがでしょう?

ドナーになってみませんか?

 

 

いま、白血病で骨髄移植を待っている患者の数は、およそ3000人。

僕も、その1人でした。

 

僕はドナーを待つ間、不安でなりませんでした。見つからなかったらどうしよう、死ぬんじゃないか、そればかり考えていました。

 

 

 

3000人が、明日も生きたいと、必死にもがいています。この病棟にだって、何人もいます。高校生、大学生、幼い子供のいる父親。

 

 

 

彼らを救ってください。

ドナーが足りません。

本当に足りません。

 

 

 

 

せっかく健康に生まれたのだから、誰かの命、救ってみませんか?

 

あなたの血で、救える命があるんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間を救うのは、人間だ。

 

 

 

 

 

 

 

本日はこの辺で。

長文、最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。

 

ドナー登録、ぜひよろしくお願いします。