或る闘病記

生きるって楽しい。

QOL

 

「ばか、入院生活で一番大事なのはQOLなんだよキュー・オー・エル!」

 

 高2のときの担任の先生は笑ってそう言った。ちょうど2週間前に高校に行ったときの話。癌だと告げると驚いたような表情をしたのも束の間、「あなたは話題に事欠かない人だね〜。」とおどけた。先生はこの日も白衣を着ていた。

 

 入院して1週間が経った。些細なことに幸せを感じられるようになった。朝起きると青空が広がっていて、白い雲の切れ間から朝日がまみえる。心地よい寒気が肌をつつく。それだけで、本当にそれだけでいい。

 

 Quality of Life. 「生活の質」というよりも、「人生の質」とかいう風に訳した方がしっくりきそうな気もする。

 質を高める、ということの最も簡単な方法は、自ら低い基準値を設定することかもしれない。それは当然いい意味で、ということだが。生きることの質なんてものは数字で測りきれないし、測りきれないからこそ自分自身の設定値が基準となりうる。

 今まで当たり前だと思っていたことが当たり前でなくなったとき、必然的に基準値は下がるものだ。するとどうだろう、もう何もかもが素晴らしい世界に見えてきてしまう。愛すべき世界が眼前に広がっていることに気づく。朝起きて自分が生きている、今ここにいる、この何とも言い難い快感。

 

 でも実を言うと、これまで通りの基準値だったとしても、病院生活はそこまで不自由じゃないかもしれない。それくらい充実している。今日も朝から元気にパンに小細工して食ってやった。美味しい。友達が持ってきてくれたラフランスは生ハムで巻いて食べました。何食べてもいいからね。お昼のハヤシライスも美味しかったなぁ。築1年、Wi-Fi完備。ここはホテルかよ。

 

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