或る闘病記

生きるって楽しい。

全身被ばく

 

 おどろおどろしいタイトルを付けましたが、今週から全身被ばくが始まりました(本当です)

 事故後の福島第一原発の敷地内に丸裸で数年間過ごすレベルの被ばく線量を浴びに行きます(笑)

 

 こわ。

 

 そこで、今日は誤解を生まないように、原子物理を絡めながら医療のお話をします。

 

 まずは2011年、嫌というほど聞かされた放射性物質放射能放射線の3つと、その単位ベクレル・シーベルトについておさらいしましょう。

 

 

これです。

 

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 言葉で説明すると回りくどくなるので上の図で直感的に理解した方がいいですね。

 

 これらを前提知識として本題に入っていきます。

 

 まず、どうして放射線治療をするのか、について。簡単に言えば、「骨髄移植の下地作り」です。

 

 放射線治療(外部照射)を行うと、その線量に応じて細胞は死滅します。というのも、放射線が身体を貫通する際、照射された部分の細胞を遺伝子レベルで傷つけるのです(DNAが切断されます)。傷ついた細胞は分裂することができず、増殖できずに死滅します。

 

 

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 あれ? 放射線なんか浴びたら癌細胞だけじゃなくて正常細胞も傷つくんじゃないの?

 

と思ったあなたは鋭いですね。

そうです。抗がん剤治療と同様、放射線治療も、正常細胞を著しく傷つけます。

 

 ところが、全ての細胞には「修復」という機能が備わっています。そして正常細胞は、癌細胞と比較して大幅に修復速度が速いのです。放射線治療は、この放射線に対する感受性の違いを利用しています。

 

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 上図のように、ある一定の強さで照射を行うと、癌細胞だけにダメージを与えることができます。そして、一部の傷付いた正常細胞の回復(数時間)後、癌細胞の回復を待たずに再度照射を行うことで、癌細胞だけに大きなダメージを与え、死滅させることができるのです。これが「放射線治療」のメカニズムです。

 

 

この放射線治療を骨髄移植の下地作り(前処置)として行う理由は、結局のところ

 

抗がん剤の届かない、骨髄に残った癌細胞を死滅させる

・自身の正常な造血幹細胞を死滅させる

 

の二点ということになります。

 

 

あれ? 造血幹細胞は正常細胞やから死滅せず回復しちゃうんじゃないの? と思ったあなたは鋭すぎます。

 

 実は造血幹細胞も、放射線感受性が非常に高く、最も傷つきやすい細胞のひとつなんです。そして造血幹細胞が死滅することで、もう二度と自分で血球が作れなくなるのです。その状態でドナーさんの造血幹細胞を移植した方が、生着しやすいのです。

 

 

 (あんまり難しいこと書いたら途中で読むのやめるやついるねんなぁ笑)

 

 

少し興味深いことでも書いときます。

一体どれほどの放射線を浴びるの?

いちばん気になりますよね。

 

現在、白血病の骨髄移植の前処置として行う放射線治療では、10〜12Gy(グレイ)と定められています。基本的には、

12Gy = 2Gy × 朝夕2回 × 3日間

になります。

 

じゃあ12Gyがどんなもんかと言うと、凄まじいです。

 

前処置として行われる放射線治療は、普通の放射線治療とは異なり、TBI (Total Body Irradiation)と呼ばれます。つまり、「全身照射」です。一般的な「癌の部位だけ」ではなく、頭のてっぺんからつま先まで一様に照射します。

 

一様照射の場合は、1Gy ≒ 1Svです。(詳しくは自分で調べてね)

 

 つまり12Gy ≒ 12Sv = 12,000mSv、ですね。

 

いちまんにせんみりしーべると!

(一般人の年間平均被ばく線量は2.4mSvです。およそ5000年分に相当します。)

 

分からない人のために、もし12,000mSvを継続して被ばくすればどうなるか、教えてあげましょう。

 

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死にます。

 

7000mSv以上被ばくすると、99%の人が死にます。おそろしいですね(ちなみに3000mSv〜4000mSvで致死率50%です)。だから今回の放射線治療は、2000mSv × 6回 に分けて、細胞が回復するのを待つんです。これでも十分やばいですよ。広島原爆の爆心地1kmでの被ばくを6回やるようなもんです。こんなん普通に二次発癌するやろ、マジで。

 

 

 治療自体は痛くも痒くもありません。でも治療後数時間すると吐き気と目眩がします。放射線って怖いね。

 

 

 

 あんまり難しいこととか怖いこと書くのもあれなんで、この辺でやめておきます。

 

 

 (最後に、みんな大好き看護師さんの溢れ話でもしときます。)

 

 

 看護師さんって(マスク付けてるんで)割と可愛いんですが、仕事柄、性格はサバサバしてる人の方が多く感じます。そんなサバサバしてる看護師さんに会話の糸口を見出すのは至難の技なのです。

 

 どうすればええんや、と思っていた矢先、ある看護師さんがヘアピンを付けていて、珍しかったし似合ってたのでベタベタに褒めてみました。(気持ち悪いことすんなよ)(自分でも流石に引く)

 

案の定、「ハイハイありがとう」みたいな感じで流されてしまいました。難しい。

 

 

 

 

 ところがです。

 翌日、僕は気付いたんです。

 その翌日も、次の夜勤のときも。

 それからというもの一ヶ月、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎日付けてくる!

さりげなく!

 

 

 

 

 

 

いや可愛すぎひんか?笑

 

気になって聞いてみたら「言うこと聞かへんかったら外してくるよ!」って言われました。ちゃんと言うこと聞きます。薬の飲み忘れとか体重の計り忘れとか、もうしません。

 

 

以上。(それだけかい)(ちゃんとオチてる?)

 

 

と、今日は怖いことばかり書いたので、ほっこり? する話で終わっときます。

おやすみなさい〜